21日目の雨




 雨の音が聞こえる。
 薄暗い部屋の中には、ひんやりと湿った空気が漂っていた。





「――不毛だな。」
 くしゃくしゃのシーツにくるまったまま、ぼそりとヒイロは呟いた。
「お前…今更そんな事言うのかよ……」
「事実だろう。」
「まぁそうだけどさ…」
 げんなりと溜息を吐きながら、それでもデュオはめげない。
「たまにはこういうのも悪くないだろ?」
 シーツの上から覆い被さるように抱き付く。
「…重い。」
「言ってくれるねー。」
 その気になればこの程度は簡単に振り払えるくせに。
 口の割に素直に頭を撫でられているヒイロに、思わず顔がにやける。
「お前の場合は、偶になっていない。」
「でも相手はしてくれるんだ?」
「冗談じゃない、誰がお前などと、」
 そう冷たく言い返すと、不意にヒイロはデュオの腕を振りほどく。
 呆ける間もなく、デュオの体はくるりとシーツに包まれる。
「俺が、お前にさせてやってるんだ。」
 低い声が耳元で囁く。
 一瞬言葉の意味を考えて、やがてデュオは満面の笑みを浮かべた。
「そういう事なら、全力でお相手させていただきます。」
「ならちゃんと俺を満足させてみろ。」
「仰せのままに」
 恭しくヒイロに口付け、滑らかな肌を指でなぞる。
「……ん、」
 微かに零れる声が耳をくすぐる。
 何度も何度も抱いた体は、未だ触れる度に新たな愛しさを思い知らされる。
「…ん……あっ……!」
 ひんやりとした部屋の空気に、火照った肌が浮かび上がる。
 波打つシーツを絡ませ濡れた音を立てて口付ければ、紅い花が咲いたような痕がキスの数だけ散りばめられていった。
 舐めて噛み付いて、隅々まで指先でその肌を暴いて。
 強引に濡らされ広げられた場所から体の奥までぐちゃぐちゃに掻き回す。
 甘い悲鳴のような声が上がる度に、ゾクゾクと痺れるような興奮を覚えた。
 わずかな刺激にも敏感に反応する体は、本能のままに揺られ貫かれ、欲望の塊を内部に飲み込んだまま自らの欲も吐き出して果てた。
「――確かに、これは不毛だな。」
 まだヒクヒクと快楽に震える体を抱き寄せながら、デュオは納得したように呟いた。
 確かに不毛な話だ。
 こんな生産性も終わりもない時間を、ふたりで過ごしていくのだから。
「でも、お前となら悪くない。」
 囁いて首筋に軽く噛み付く。
「…当然だ。」
 ひくんと肌を震わせながら掠れた声が上がった。
「こんな、くだらない事をさせてやるのは、お前くらいだ…」
 焦点の定まらないまま熱に潤んだ表情に、また体が熱を覚える。
「お前の相手だったら、いくらでも大歓迎だ。」
 デュオはニヤリと笑みを浮かべると、上気した頬にそっと口付ける。
 さらさらと衣擦れるシーツの波音を聞きながら、二人は再び体を重ね合わせていった。






 窓の外から雨の音が聞こえる。
 雨は当分止みそうにもなかった。





何か色々悶々としてた末に、吹っ切れて錬成された産物。ちょうど梅雨っぽい話になったから結果おーらいです。

(2010年06月06日)

→戻